明治安田に業務停止命令へ、告知義務に二重基準

注:以下の文章はあくまで私の私見であり、私の所属している会社の見解ではありません。また、決して他社を誹謗・中傷するものではなく保険業法には抵触しません。*1

金融庁は18日、明治安田生命保険が個人向け保険の契約募集で、健康状態などの告知義務に関して保険業法に違反する説明をしていたとして、同社に一部業務停止を含む行政処分を発動する方針を固めた。

 明治安田生命の全店で、個人向けの契約募集を2週間程度禁止し、内部管理体制の見直しや再発防止策の提出などを求める業務改善命令を出す方向だ。月内に正式な処分を決める。契約募集の停止中も、保険金支払いなどの業務は通常通り行われる見通し。

やってしまいましたね・・・現場の感覚で言わせてもらうと2週間の業務停止は相当厳しいです。
なんでかというと自分みたいな固定給の人間はいいですが、保険のおばちゃんは成績に応じての給料ですから4月の給料が約半分になってしまうってことなんですよね・・・

ただ、今回の問題は営業側の問題よりも事務方の問題がメインで業務停止なので2週間という重い処分は妥当といえば妥当かもしれません。

告知義務違反」と「詐欺無効」

生命保険の契約時には、健康状態や過去の病歴などを保険会社に知らせる告知義務がある。虚偽の告知をした場合などは、保険会社は契約解除や保険金の支払い拒否ができる。ただ、告知義務への違反が発覚しても、契約してから2年を超えると契約を解除できないと約款に定めている。

 明治安田生命の営業職員の中に、契約できない病歴がある人にも、2年たてば保険金が受け取れるなどと抜け道を説明し、契約を勧誘していた例が多数あったと見られる。

 一方、約款は保険契約で契約者が保険会社を欺くような行為があった場合は無期限で、契約解除できる規定がある。このため保険金の支払いを抑えたい本社は、こちらの基準を適用して、告知義務違反のあった契約の解除や保険金支払い拒否をしていた模様だ。営業現場の説明で保険金を受け取れると思っていた契約者が本社から支払い拒否などを受けたため、苦情が多く出て、告知義務をめぐる同社の「二重基準」が発覚した。

問題点は2つ
Ⅰ:契約できない病歴*2でも、加入時に告知をせず、2年たてば大丈夫だからという勧誘方法自体が保険業法違反。
Ⅱ:「告知義務違反」と「詐欺無効」の違いが社内で明確な基準がなく、2年以上たってしまったものでも「それは詐欺無効です」ということで保険金を支払わなかったこと。
(「告知義務違反」については約款に規定がありますが、「詐欺無効」については「欺く行為があった場合は契約解除できる」との記載だけで具体的基準は記載されていない)

いづれについても「保険」という商品が持っている特殊性から出る問題ですね・・・

保険の特殊性

普通の企業の場合「商品(サービス)を売る」という行為は普通に行われます。お金を支払えばどんな方でも商品は買えます・・・しかし、保険に関してはこれが通用しません。

会社の中に「問題がある方には保険を売りたくない」部門があるのです。
まあ、そうですよね。来週から入院する人は今日保険入れるなら、自分が払った保険料よりもたくさんのお金がもらえて得するわけですから・・・

なので、保険に入るときには「審査」が絡むんですよ。
「売りたい」営業側と「売りたくない」査定部門とでのやりあいは日常茶飯事です。

収益を上げたい事務方

さて、保険会社も普通の民間企業ですから「収益」を上げることが最大目標です。

とはいえ、このご時勢いろいろな理由*3から保険会社の売り上げは減っています。

ということは保険会社は収益を上げるためにはどうすればいいのか?

そうです、「支払う保険金を減らせ」ばいいんですよね。

「問題がある契約をしっかり排除して支払い保険金を減らす」ことについて本来であれば明確な基準が必要であるはずなのに、基準があいまいな「詐欺無効」を乱発してしまったのにはこういう背景があるのでしょう。

保険業界の抱える問題

と、タイトルは書いてみましたがこれを一つひとつ書き出したら本が1冊できてしまうくらいの分量なのでとりあえず2・3個だけ書いてみます・・・

営業職員制度が与える影響

営業職員(要は保険のおばちゃん)が保険を売るという制度は日本だけのものです。この制度は戦後まもなくの女性の雇用を増やすという点では評価できるものでした。
しかし、この制度のもたらした問題は時代を経るにつれていろいろ出てきてます・・・

普通の主婦が短い期間の研修でセールスレディになるわけですから、知識不足による誤った説明の勧誘もありえます。昔でしたら入社の時点でセールスがちゃんとできるか見極めますが、近年は人が減っているのでどんな人でもいれなきゃという状況に陥っています*4

日本人の保険に対する意識

「保険」というのはリスクヘッジの1つの手段で、万が一リスクを背負った場合にそのリスクを解消・軽減させるために保険金を受け取るというもので、本来は契約する側が自分のリスクを考え、自分に見合った保険を契約するものです(と私は考えます。)

ですが、長年の営業職員制度がもたらした保険加入の動機は
「おばちゃんが良く来てくれるからお付き合いするよ」的なものが多くなってしまいました・・・ 勧められるがままに入って契約内容は良くわかってない方が多いのが現状です。

外資系の対等による価格競争

そこに目をつけたのが外資系の保険会社です。外資系は営業職員を多くは抱えていませんので商品開発のコストを抑えたり、保険の対象を入院のみに絞ることで保険料を安くし売込みを始めました。
私の考えでは保険はオーダーメイドであるべきと思ってますが、外資系は徹底したパッケージ商品によりコストを抑えた商品販売を行っていますね。

国内生保もそれに対抗して保険料を抑え始めました。とはいえ、大量の営業職員にかかるコストはそんなには減りませんから商品の内容を変えることにより保険料を抑えました*5


営業職員制度のもたらした影響は多岐にわたります。とはいえ、この体質を変えるには10年20年くらいのスパンで変えていこうとしなければ無理だと思います。
残念ながら、営業職員だけでなく日本人の保険に対する意識まで変える必要があるわけで、例えば1社だけが急速に変化を起こそうとすれば、その会社は社会に認められるまで時間がかかってしまうので会社の体力が持たずに破綻してしまうでしょう・・・

というわけで

これが、mikoshikawarikaさんが日記に書かれていた「慣習的なもの」が生まれた一つの要因だと私は考えます。しかし、正直言って今回のことだけで変われるきっかけになるかは疑問です・・・(´・ω・`)*6

長文申し訳ない

本来はもうちょっとまとめて書こうと思ったんですが、つれづれなるままに書いてしまって長くなってしまいました。すんません(´・ω・`)


てか、こんなに文句ばっかり書いてるんだったら早く会社辞めろってことだよな(爆)

*1:他社の誹謗・中傷自体が保険業法違反なので下手に他社のこととか言えないんで、この断り文章が必要なんですよ・・・いかがなものかな、この法律も

*2:国内大手生保の場合、例えば糖尿病や高血圧症などの場合加入は厳しくなります。

*3:不景気による運用環境の低迷や家計に占める保険料負担を減らしたいという気持ち、外資系生保の対等、などが挙げられます。

*4:支社・営業所単位でどれだけ人を採用するかというノルマもあるんです。

*5:アカウント型などの商品が開発されたのはこういう背景からです。

*6:ここには書きませんでしたが、国の保険行政も問題点を抱えてますので、そこも変えないといけないんですよね・・・